【2020F1イギリスGP】ベッテルはあらゆる手を尽くすも10位に…「マシンと僕がお互いを見つけられなかった感じ」

2020年F1イギリスGP、ベッテルは不安定なマシンで最後までまったく攻めることができず、10位でフィニッシュしました。

【2020年F1イギリスGP 結果】
1位 ルイス・ハミルトン
2位 マックス・フェルスタッペン
3位 シャルル・ルクレール
4位 ダニエル・リカルド
5位 ランド・ノリス
10位 セバスチャン・ベッテル

2020年F1イギリスGP ベッテルの経過


FIAのサイトで、全車の全周回タイミングデータをPDFで公開しています。
Event & Timing Information
(FIA公式サイト)

11位以下は全車ミディアムでスタート。
ベッテルは10番手グリッドからソフトでスタート。
L1まずまずのスタートで、10位をキープ。9コーナーのコプスでいったんオコンを抜いたものの、コース外にはみ出し、元の順位に。
L2マグヌッセンのクラッシュでセーフティーカー導入。
L6レース再開。
以降、ベッテルは前のオコン、後ろのガスリーとそれぞれ0.5秒差で推移。
L8オコンのペースが0.2秒ほど上回り、徐々に差が広がる。
L10オコンと0.8秒差に。
L12クビアトのクラッシュで、2回目のセーフティーカー導入。
5位リカルド以下がピットイン。オコンとベッテルもピットインし、ハードに交換。
第2スティント ミディアム
L13ベッテルはタイヤ交換の間にオコンの前に出ることに成功。順位は変わらず10位。
L19レース再開。ベッテルは3コーナーでロックし、オコンにかわされ、11位に。すぐ1.5秒差に広がる。
以降はオコンよりやや速いペースで徐々に差を縮める。
L23オコンと0.7秒差に。
L26オコンとストロールのバトルで、オコンとベッテルが0.5秒差に縮まる。
以降はオコンのペースが0.2秒ほど上回り、徐々に差が広がっていく。
L30ガスリーがジョビナッツィを抜き、ベッテルの後ろに。この周はベッテルより0.5秒速いタイム。以降はほぼ同ペースで1秒差。
L36ステイアウトしていたグロージャンがピットインし、ベッテルは10位に。
ガスリーがベッテルのDRS圏内に入る。
L37ハンガーストレートでガスリーに抜かれ、ベッテルは11位に後退。
すぐガスリーと1.5秒差に。以降も0.3秒ずつ離されていく。
タイヤ交換をしたアルボンが1.5秒以上速いペースで近づいてくる。
L48アルボンと1.3秒差に。
L49ハンガーストレートでアルボンに抜かれ、ベッテルは12位に。
L50ボッタスが左フロントのパンクでピットイン。ベッテルは11位に。
L51サインツがやはり左フロントのパンクでピットイン。ベッテルは10位に。
タイヤ交換したボッタスが速いペースで近づいてくる。
L52ハンガーストレートでいったんボッタスに抜かれたものの、すぐ取り返し、ベッテルは10位でフィニッシュ。

【フィニッシュ後の無線】

アダミ「12位。……10位だ、すまない。最後にパンクがいくつもあった。ブレーキを冷やせ。(他の結果)」
ビノット「セブ、マッティアだ。今日はきついレースだった。大変だったことはみんな分かっている。1週間後にまたある。もっとうまくやれる」
アダミ「ラジオ・チェック」
ベッテル「ラジオ・チェック、OK。うん、きついレースだった。マシンをほとんど信頼できなかった。要するに予選と同じだ。1周1周苦しんだ。たくさんのことを試したけど、大きく効いたものは何ひとつなかった。でも、もう一方のみんな、よくやった。シャルルもよくやった。それと、見事なピットストップだったよ」
アダミ「了解、ありがとう」


この音声では間がカットされていますが、ビノットが無線で話したあと、ベッテルはすぐ答えず、1分ほど黙っていたそうです。アダミが「ラジオ・チェック」と言っているのは、無線に問題があるのかと思ったから。

ビノットが話したあと、ベッテルは無線のボタンに左手の親指を持っていきましたが、そのまましばらく考え、結局押さずに手を離していました。

「うん、きついレースだった」とビノットの言葉を繰り返し、「1周1周苦しんだ」と話していますが、本当は、そんな言葉では足りないほどだったのかもしれません。

でもベッテルはそれを訴えるより、言うべきことを整理して、チームメートの表彰台を称え、素早いタイヤ交換をほめました。ベッテルのこうした態度にはいつも頭が下がります。

バトルができない状態


ベッテルはレース後に、1周目から苦しんだと話しています。

1周目には、コプスでいったんオコンの前に出ましたが、コース外にはみ出してしまいました。

2回目のセーフティーカー明けも、素早いピット作業でオコンの前に出られたのに、3コーナーでロックしてすぐに抜かれてしまいました。

アレックス・ブルネッティ(@deadlinex)のツイートによると、ベッテルはセーフティーカー中、スタート前にやるようなバーンアウトまでやって、リアタイヤも入念に温めていたそうです。これについてはアダミも無線で「いい仕事をしている」と褒めていたとのこと。

しかし、その甲斐もなく、あっさり抜かれてしまいました。

ベッテルは「ブレーキングを少し遅らせてスピードをキャリーしようとするたびに、マシンをコース上に留めるのに苦労した」と話しており、このときがまさにそういう瞬間だったのだと思います。

限界を越えて無理をしていたわけではありません。ほんの少し攻めただけで、すぐコントロールを失ってしまう状態だったのだと思います。

だからまったく攻めることができず、後ろから攻め込まれると、為す術がありませんでした。

37周目にはガスリーに抜かれましたが、あまりにもあっさり抜かれてしまったので、わたしはあっけにとられました。

ガスリーのほうがペースは速く、だんだん差は詰められていたので心配ではありましたが、マゴッツ、ベケッツの辺りで0.5秒以上差があったので、まだ大丈夫だろうと思っていました。ところが次のハンガーストレートで急に順位が入れ替わったので、何があったのかと何度もアプリを見直してしまいました。

シルバーストンは決して抜きやすいコースではありません。今回のレースでも、中団グループはずっと数珠つなぎになっていました。ガスリーは確かにベッテルより速いペースでしたが、せいぜい0.3秒程度です。その程度のペース差なら、そう簡単には抜けません。普通なら。

ベッテルはとにかくコースを外れないペースで走る以外なかったのだと思います。これでは「レース」とは言えません。

あらゆる手を尽くしたベッテル


ベッテルのペースはレース通して中団グループの中でも後方でした。

それでもスティントの序盤、タイヤが新しいうちは、まだほかのドライバーについていけました。しかし、第1スティント(たった7周でしたが)も第2スティントも、後半になるほど周囲のドライバーに置いていかれる感じでした。

これはベッテル、オコン、ガスリーのラップタイムのグラフです(以下、グラフはすべてRaceFansより)。
2020 British Grand Prix interactive data: lap charts, times and tyres
2020.8.2(RaceFans)
2020-04-2.png
特に第2スティント、36周目辺りから、ベッテルが他の2人に置いていかれたことが分かります。

この頃、ベッテルはあらゆる方法を試していたようです。

オンボードを見ていたアレックス・ブルネッティは、こうツイートしていました。

今、セバスチャンが違うラインやハイブリッドマッピング、オーバーテイクモードを試しているのが見てとれる。彼はこの数周、あらゆる方法を試している。それがかえって心配だ。限界を少しでも超えたらSF1000がどうなるか、もうみんな知っているだろう。


ベッテルも、「2、3周ごとにドライビングスタイルを変えようとした」とレース後に話しています。

しかし、その努力が報われることはなく、タイヤがタレると共に周囲との差も広がっていきました。

終盤、49周目にアルボンに抜かれましたが、アルボンのペースは2秒近く速かったため、本当にあっという間でした。

49周目に入ったときにはまだ1秒以上差があったのに、半周先のハンガーストレートでかわされました。ペース差が0.3秒のガスリーに、あれほどあっさり抜かれたのだから、当たり前です。

だから最後、パンクで後退したボッタスが新しいソフトで迫ってきたときには、絶対に守れるはずがないと思いました。

ファイナルラップに入ったときは2秒差。しかしコプスまでにもう0.6秒差になっていました。案の定ストウでかわされましたが、そのあとどうして抜き返すことができたのか、まったく分かりません! 小さな奇跡です!

今回、ベッテルはレース通してルクレールより0.5~1秒遅いペースでした。開幕戦のオーストリアと似ています。
2020-04-2.png

前回のハンガリーは逆でした。ルクレールはレース通してベッテルより0.5~1秒遅いペースでした。

チームメートが入れ替わり立ち替わり、毎回こんなにレースペースが違うのは異常です。

幸い、1週間後にもう1度シルバーストンでレースができます。また、それまでに撮影日で走行する予定もあります。

次までに修正できて、ベッテルがちゃんと「レース」ができるマシンになっていることを祈ります!

2020年F1イギリスGP ベッテルのインタビュー


Sebastian Vettel: «Kam auf keinen grünen Zweig»
2020.8.2(Speedweek)

「最高に楽しいレースじゃなかったね。僕はあらゆることを試した。ドライビングスタイルも含めてだ。でも今週末は、僕たち、マシンと僕が、お互いを見つけられなかった感じだ」

「僕は苦労して、ほぼ2、3周ごとにドライビングスタイルを変えようとした。でも結局、マシンをほとんど信頼できなかった。ブレーキングを少し遅らせてスピードをキャリーしようとするたびに、マシンをコース上に留めるのに苦労した」

「僕はもう十分長くやっている。周回数が少し減るのは、もちろん理想的ではないけど、それでも十分な周回はしたから、簡単にリズムを取り戻せるはずだ。でも今週末は全然進歩がなかった」

今はキャリアの中で最も苦しい時期かと聞かれると、ベッテルはこう答えた。

「さあ。別に息は切れてないよ。僕は今すぐもう1レースやって、今度はうまくいくか見てみたい。だけど、そうはいかない」

「今の状況では、らちがあかない。何か根本的におかしいところがある。それはマシンの問題かもしれないし、僕の問題なのかもしれない。これまでで一番ストレスの多い時期ではないけど、最高にいい時期でないのはたしかだ」

「スタートするときは、希望でいっぱいだった。うまくいくんじゃないかって。でも1周目からマシンの感触はよくなかった。そういう感触では、きちんと攻めることができない。前のドライバーに攻め込むより、守るほうが多くなる」


ベッテルはレース前のインタビューで、周回が少なめでリズムに乗れなかったから、レースでたくさん走るのが楽しみだと話していました。そうすればきっとよくなるという希望を持っていたのだと思います。しかし、そうではありませんでした。

「僕の問題なのかもしれない」と言っているのはベッテルの謙虚さであって、自信を失ってそう言ったのではないとわたしは思います。

ベッテルは子どもの頃から、問題を道具のせいにせず、自分を向上させようとしていたとカート時代に面倒を見たペーター・カイザーは語っていました。

今や経験豊富なベッテルなら、問題の多くがマシンにあることは分かっていると思います。それでも、自分にも、もっと改善できることがあるのではないかと考え、努力する。

だからレース中も、単にピットからの指示を待つのではなく、自ら工夫して、あらゆる方法を試したのだと思います。レース中には効果は現れませんでしたが、その努力はきっと次につながるはずです。

まだ肉体的には余裕があるから、すぐもう1レースやりたいと話しているのにも感動しました。それでこそベッテルです!

動画:イギリスGP後のベッテルのインタビュー


マシンは走るのがすごく難しい状態だった。自信がもてず、すごく苦しんだ。理由は分からない。よく見てみる必要がある。

でもレース中、あれだけの周回、最初から最後まで、ずっと苦しんだということは、何かつじつまの合わないことがあったんだろう。

別にストレスの多いレースではなかった。チャンスがなかったから。周りのほうが速く、僕はオーバーテイクされた。自分のマネージメントをしてコース上にとどまるだけで大変だった。

肉体的には全然きつくなかった。一度も攻めることができなかったから。マシンは僕の好きなようにさせてくれなかった。これから理由をよく調べる必要がある。次の週もあるから、そこでよくなるよう努力するよ。


当然ながら厳しい表情ですが、ずっとそうだったわけではありません。

いつもジョークを言い合っているオランダZiggo Sportのインタビューはこんな感じでした。

Q:孤独なドライブだったね。

天気の話をしようか? 最高にいい天気だね(笑)。

Q:ほんとにね。別の話をする?(笑)

うん、別の話をしよう。


次は、ベッテルが脱線せずに本題についてたくさん話をしたくなるような、本物の「レース」ができますように!

Comments 2

Fumi  
確かに天気良かったですね。

更新ありがとうございます。相変わらずのマシンの不安定さに翻弄されている感じですね。
次戦はさらにソフトなタイヤらしいので、天気次第でパンク祭りからの超展開も期待?出来るので
週末を楽しみに待ちたいと思います。

2020/08/04 (Tue) 22:42 | EDIT | REPLY |   
megu  
Re: 確かに天気良かったですね。

Fumiさん、いつもありがとうございます。(^^)
終盤はびっくりする展開でしたね。何の前兆もなくいきなり壊れるのは、何年たってもちっとも改善しませんね。次回は柔らかくなる分、スティントが短くなって、パンク祭りにはなりにくいのではないかと思います(^^;)
次はベッテルらしいレースが見られることを切に願っています!

2020/08/05 (Wed) 12:26 | EDIT | REPLY |   

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管理人:megu

1990年代初め頃からのF1ファン。マンセル、ハーバート、ビルヌーブのファンを経て、今はセバスチャン・ベッテルが大好き。
イギリスのものが好きで英語の勉強を始め、現在、雑誌の翻訳の仕事を少ししています。